りょうちんのシンプル思考日記

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三菱ケミカルがROIC導入。企業価値向上を意識した経営へ前進

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日経新聞に「経営管理に投資効率、ROIC導入、事業撤退判断も。」という記事があった。

www.nikkei.com

ROICとはReturn on Invested Capitalの略で、投下資本利益率のことだ。税引後営業利益を投下資本で割ることで求めることができる。

三菱ケミカルホールディングス経営管理の指標として導入するらしい。

  ROICは30ほどある事業ユニットごとに算出する。目標値はフィルムなどの機能商品で8%、素材で5%、医薬品などのヘルスケアで5%に設定する。持ち株会社がROICの数値を参考にして各ユニットに採算の改善方法や保有資産の圧縮、在庫の削減などを求めていく。

 最低限の基準値として加重平均資本コスト(WACC)という数値を採用する。これは調達資金のコストを示すもので、業界平均を参考にして部門ごとに3~5%と設定する。ROICがWACCに届かなければ改善策を求め、改善できなければ持ち株会社が事業の撤退や売却を検討する。

事業ユニットごとでROICの目標値を設けているけど、8%とか5%とか低いな。

WACCも部門ごとに設定するみたい。これは良いのだろうか?

WACCは株主資本コストと有利子負債コストを加重平均したものであって、会社として資金調達するのにかかっているコストだと思う。会社として達成すべきハードルレートのはずだ。資金用途としては対象事業を決めても、その部門として資金調達するわけではないと思う。よって、WACC自体は会社として設定したものを用いたほうが正しいような気がする。

ROICがWACCに届かなければ改善策を求め」というのはその通りで、ROIC - WACCスプレッドがマイナスということは、たとえ会計上は利益が出ていても、企業価値にはマイナスなわけだ。それならば、そのような事業は辞めてしまったほうが企業価値にプラスになる。逆に、ROIC - WACCスプレッドがプラスになって、やっと企業価値向上につながるわけだ。

ちなみに、株主資本コストは会計上の利益には反映されないかわりに、株価下落などにつながるわけだけど、会社を経営したい・する人は、資本コストを理解して意識した方が良いと思う。簡単に言えば、資金を調達を調達するのにいくらかかっているのかがWACCで、調達した資金を使ってどれくらい儲けているのかがROICというだけの話だ。

 

 ユニットの評価にはROICに加えて売上高営業利益率や増収率、技術開発の取り組みなども含める。評価結果を報酬に反映させるため、役員報酬の業績連動部分の比率を従来の2割から4割に高める。資本効率を意識することで自己資本利益率(ROE)も向上させる狙いがあり、2021年3月期にROEは12%(前期実績は4・8%)への引き上げを目指す。

三菱ケミカルは経営管理の指標として総資産利益率(ROA)を使っていた。

せっかくROICを指標にしても、ROEROAを用いてしまうと、また会計上の最終利益をいかに上げるかという本質から外れた所に意識が向いてしまいそうで残念な感じがする。また、ROAだと、事業に使われていない資産もカウントされてしまうわけで、正確な事業評価にはつながらないと思う。

 

何れにせよ、ROIC導入というのは良い前進だと思うし、もっと広まれば良いと思う。理論を追求していっても得られるものはあまりないと思うけど、最低限の知識としてはROICやWACCは必要だと思う。

ちなみに筆者が書いているnoteには、ROICやWACCがいっぱい出てくる。

 

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