りょうちんのシンプル思考日記

投資・ビジネス・テクノロジー・スポーツなどについて、日々のインプットをシンプルにアウトプットすることを目指すブログ

会社は誰のものか?という問いに対するシンプルな答え

日経新聞に「1600年設立のイギリス東インド会社は」という記事があった。

イギリス東インド会社を例にして、最終的に株式会社は誰のものかという事を問いたいらしい。ちなみに世界初の株式会社は1603年のオランダ東インド会社だ。

1600年設立のイギリス東インド会社は、はじめは1回の航海のたびにもうけを分け合っていた。まず船を借りたり乗組員の報酬を払ったりするための資金を集める。船がアジアから物産を持ち帰ると、それを売って得たお金をすべて、出資の比率に応じて分配した。

会社があげた利益は元手を出した人のもの、という考え方が明確にあったわけだ。そのころはまだ株式を流通させて広く資金を集めるという仕組みがなく、現在のような株式会社の制度は整っていなかった(羽田正「東インド会社とアジアの海」)。ただ株主の権利が早くから意識されていたことは、注目していいだろう。

 株式とは、所有と経営を分離するということが目的であり、1600年のイギリス東インド会社の方式はその原型であると言えそうだ。資本家がリスクを取って資金を提供し、資本を提供されたものは事業を行う。イギリス東インド会社の資本提供者は、自分で航海しているわけではないので、本当にただの資本家だ。手を動かすことはない。儲かったら、儲けが配分される。儲からなければマイナスになるわけだ。ちなみに資本家と経営者が一緒であれば、オーナー経営者と言える。

 

企業は稼いだお金をため込まず、賃上げに振り向けるべきだ、との声がまた政府から出ている。けれどもそのお金は国が使い道を決められるものではなく、本来、株主のものだ。長い歴史のあるルールである。政府は企業統治改革で株主重視経営を広げようとしているが、株主の権利を損なうことになれば矛盾ではないか。

 PLは、売上⇒売上原価販管費(給料)支払利息税金利益の順に載っている。「稼いだ金」と言っているのが、この「利益」の部分になるのであれば、それは株主に帰属するわけだ。要は、残りカスが株主のものと言える。優先されるステイクホルダーの順番は、顧客⇒仕入先⇒従業員⇒債権者(銀行、社債保有者)⇒国・地方公共団体⇒株主という順番だ。元々、株主より従業員の給料の方が優先されているわけだ。さらに、赤字だったら株主はマイナスにもなるわけだけど、従業員が持ち出してマイナスになるということはない(ブラック企業と呼ばれる所はあるのかもしれないけどw)

政府が、株主重視と言いながら、賃金を上げろというのが、株主に帰属する残りカスをもっと減らせと言っていることになるのだから、確かに矛盾している感じがする。そもそも政府が、株主重視とか言わなければ良いと思うけど。

 

「利益を賃金に回せ」と大ざっぱに言うから角が立つ。言い方に工夫がほしい。たとえば経営者が株主に負っている責任を突く手がある。「利益を人への投資に割いて会社の成長につなげ、株主にもっと報いてみては」という具合にだ。経営者も真面目に受け止めねばなるまい。会社は誰のものか。400年来のテーマだ。

 「利益を人への投資に割いて会社の成長につなげ、株主にもっと報いてみては」というのは、真っ当な意見だと思う。結局はバランスの問題だと思う。資本を最適に管理することが、経営者の一番の仕事であるわけで、人への投資をした方が、全体の利益にとってプラスならそうするべきだ。それでも賃金を上げないということは、そもそも上げてもしょうがないという経営判断ということになる。そういう気持ちがなくても、結果そう言っていることになると思う。

(ただ、大企業は福利厚生など非常に恵まれており、またムダな仕事を多数している人でも高収入であるから、上げるのはどうだろうと思うけど。)

会社は誰のものか。400年来のテーマだ。」という締めくくりになっているけど、答えは簡単で、「会社は誰のものでもない。価値を創造するためのただの仕組みだ」で良いと思う。この答えが、私は一番しっくりくる。なんで、いつも誰のものかという表現を使うのだろう?PLを見れば、それぞれのステイクホルダーにどれくらい価値を提供したのかが一目でわかるわけで、そのバランスは経営者が取っている、というのが株式会社の仕組みだ。ただそれだけのことだと思う。

あと上場企業に勤めているのであれば、自分が勤めている会社の株を買えば良いと思う。逆に、買いたくないような会社に勤めているのであれば、さっさと辞めたほうが良いとも思う。

 

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